七夜十一夜物語(side-A)
年が明けてから初めて、土日を「連休」として迎えられる。
平安神宮での2日遅れの初詣で商売繁盛を願った憶えはないのだが、なかなかに不穏な予感を禁じ得ない年始である。そんなことより待ち人はどうした。来ずか。来ずなのか。
久々の土日休みとはいえ落ち着きのない性分が災いし、どうにも家でゆっくり過ごすということができない。
今日もすっかり夜更けまで、京都の魑魅魍魎たちと楽しく過ごした。
遠出や遊びに行く用事がない日でも、ふらっと近所の浜辺を散歩したり、自転車で好きなコーヒー屋に行ったりするようにしている。何の用事もなく外を出歩くことは、自分にとってリフレッシュ以上の意味合いがある気がする。じゃあ、何の意味があるのかと言われても、わからないけど。
23時過ぎになると、電話が鳴る土曜日がある。
「起きてる?徘徊しよう、徘徊」
と言って連れ出してくれるご近所さんの友達がいる。一応面倒臭がってみせるが、終電も気にせず夜の空気を吸える喜びにソワソワしながら、二人で自転車でコンビニへ行くのが好きだ。
行くのはだいたいローソンかファミマで、連れ出し賃として友達は缶コーヒーを奢ってくれる。お礼に、とタバコを一本差し出す。
冬の夜のパキッとした空気を、友達とその彼氏の穏やかな恋の話とホットの缶コーヒーが溶かしてゆく。
恋の話、将来の話、人生の話。
いろんな話がぷかりと浮かんでは、タバコの煙と一緒に夜空に消えてゆく。
コンビニ、信号、街灯とマンション。ときどき通る車のヘッドライト。1ドルの値段もつかないこのベッドタウンの夜景が、暮らす人々の人生を照らしている。
最終電車に揺られている。
駅からの帰り道、久しぶりにセブンイレブンに立ち寄ろう。
0ドルの夜景は僕の人生も照らしてくれる。
そうしてまた少し安心するのだろう。